シードル原料事情 日本では
日本のシードル原料事情
日本ではフランスと同じく「シードル」と呼びます。主に青森県や長野県などりんごの名産地で造られています。日本のシードルは、ふじや紅玉という糖度の高い生食用品種のりんごを使うので、繊細ですっきりとした味わいで、果実の甘味があるものが多いです。アルコール度数は4〜6%程度。
前述したように、日本のシードルの歴史はそれほど古くはありませんが、近年りんご農家がワイナリーに醸造を委託したりシードル専門の醸造所ができたりと、多くのブランドが誕生しています。おいしいりんごを栽培している日本なので、今後有名ブランドが生まれる日が来るかもしれませんね。
シードルは進化している
日本のシードルは、この5年ほどで凄まじい勢いで進化しています。かつては、ワイナリーがワイン用ブドウの生産の合間につなぎ的に造ったり、土産物需要のために中甘口タイプを造ったりすることが多く、香りも決して心地よいとは言えないものも。ところが、日本各地で同時多発的に、クラフツマンシップをもち合わせた造り手たちによって魅力的なシードルが造られ始めているのです。
ワインのように細かい造りの規定がないため、自由に造れるのがシードルの面白さ。ホップやハーブ、他の果実などを加えたものや、苦味を加えて複雑性を出したもなど、実に多彩な味わいが楽しめる。今回紹介するのは、ドライな仕上がりで食事との相性もよいものばかり。かつての甘いタイプとは別物の食中酒に。いま、シードルを飲まない手はないね。
リンゴ生産の半分が生食用ふじりんご
りんごの全国生産量は73.5万トンその内約半分の37.5万トンが「ふじ」となっています。全体の約半分以上が「ふじ」「サンふじ」ということになります。また日本で誕生したリンゴの品種「ふじ」が世界各国で栽培されるようになり、2001年には世界のリンゴ生産量のトップになっていたことが明らかになりました。
すでに世界のリンゴ生産量の20%を占める存在になったということです。 国際園芸学会情報誌に掲載された論文で明らかになったとして、農業生物研究機構・果樹研究所が公表しました。
国内ではすでにリンゴ生産量の55%を占める。海外ではこの20年で急速に生産が増え、米国、中国をはじめ南半球でも広く栽培されていると言われます。この広がり方はふじりんごが世界で美味しさを認められたことによるものと推測されます。
りんご 中国を除く世界生産のリンゴ
世界のリンゴの生産量は意外と詳細が見つかりません。特に品種別となると実態がつかめないのが現状です。
アメリカの果樹専門誌の統計からみると、中国を除外した統計ではトップはレッドデリシャスの18.35%、2位はゴールデンデリシャスの14.55%、3位はガラ/ロイヤルガラの14.00%、4位はふじの6.88%、5位はグラニースミスの5.38%となっています。
その中で、日本で栽培されている品種では、ジョナゴールドが7位で2.76%、紅玉が14位で0.96%、王林が18位で0.49%、つがるが21位で0.41%、陸奥が38位0.12%、北斗が39位で0.10%、千秋が40位で0.08%である。
中国を除外するのは、中国のリンゴ生産量が莫大で、しかもふじという単一品種に特化しているので中国を入れると世界的にみた品種のシェアが歪んでみえるからということのようですが。
デリシャス系1000万トン
中国を除く世界のレッドデリシャス、ゴールデンデリシャスの生産量は、2025年にそれぞれ500万トンをこえるであろうが、ふじは240万トンに満たないであろうと推測されます。
しかし、中国を入れるとふじの生産量は実に3540万トンにもなると予測される。
国内産の2015年産ふじは5年前に比べてシェアを下げ、53.1%である。つがるのシェアは11~12%で維持している。ジョナゴールド及び王林のシェアは減少傾向にある。その他品種のシェアは、2005年の14.4%から2015年には21.3%と大幅に上昇している。
1982年の日本における生産量に占める品種別シェアをみると、北米から導入した品種(祝・旭・紅玉・国光・ゴールデンデリシャス・レッドデリシャス)が43.2%を占めていた。
現在では外国から導入した品種を育種母木としているが、日本のオリジナル品種ともいうべき品種が93%を占めている。
ふじを超える品種は
一般的に見て「最近のリンゴは、いつ食べてもおいしいですね」と言われることが多く、うれしい思いをする。これはCA貯蔵など鮮度保持技術の進歩に負うところも大きいが、なんといっても味の良い品種を日本のリンゴ育種家が開発したからという誇らしさも正直なところですが、これでいいのかといういう意見も多くあるのは確かです。
しかし、晩成種である「ふじ」に片寄り過ぎ、リンゴを楽しんで食べる時期が限られるのではないかと心配される意見も多くあります。早くふじ」より貯蔵性のある赤色晩成品種の出ることを期待していることは確かにあります。
リンゴにはもっと季節のバリュエーションがあってほしいと望まれています。
国産シードルの個性とリンゴ品種
日本で栽培され流通される品種となると90種ほどで少ないといえます。世界ではりんごの品種は、世界中で約15000種類、日本では約2000種類もあります。
しかし、りんごの本場青森県りんご試験場では約300種、青森県内では約50種が栽培されています。そして市場に出荷されているのはとなるとぐっと減って約40種類です。
市場流通となると品種の数は限られているのが実態です。市場で売れないものは生産されないことが実態としてあるからで、産地も限られた数県で9割以上のシェアが占めるいう実態です。
このようにシードルの適した多様性のあるりんごが本場ヨーロッパのように生産されているかといえば日本のリンゴは、ふじリンゴが代表するようにほとんどが生食のための生産であり、その規格外品を加工用に使っているという現実があります。お菓子、果汁などの生産にも同様の傾向が存在します。
今後、りんご生産者の減少と共に、新しい生産方法や新しいニーズに適応したりんご生産に変化を起こせるかが、大きな期待と共に求めたいところです。